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肺がん

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肺がんは治療の進歩が著しく、毎年ガイドラインを変えても追いつかないほど早いペースで新薬が開発されている。それと同時に、薬の効果を高めるために、遺伝子解析に基づく「個別化治療」が行われる時代も到来した。肺がんの治療成績はどれほど高まったのか、そして治療は今後どのような方向に進んでいくのか、順天堂大学医学部附属順天堂医院の副院長 呼吸器内科学講座教授 高橋和久医師にお話をお聞きした。

肺がん

――肺がんは死亡率が高いがんの1つです。どのようなタイプがあるのかなど、大まかな特徴を教えてください。

がんの統計には、1年間に亡くなる人の割合を示す「死亡率」と、新たにがんと診断される人の割合を表す「罹患率」の2つがあります。前立腺がんのように、罹患率が非常に高くても、治療や検査の進歩により死亡率が低いがんもありますが、肺がんは罹患率・死亡率ともに高いのが特徴です。患者が多いことに加えて、亡くなる人も多く、年間約7万4000人が肺がんで亡くなっています。

形態学的には、肺がん全体の85%を占める「非小細胞がん」と、残る15%の「小細胞がん」に分けられます。割合の多い非小細胞がんには、肺がん全体の半数以上を占める腺がんのほか、扁平上皮がん、大細胞肺がんなどがあります。約30年前、私が呼吸器を専門にした頃、男性に最も多いのは扁平上皮がんでしたが、今は腺がんが多くなりました。

――肺がんの治療は大きく進歩しています。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の効果はいかがですか。

分子標的薬が2002年以降に発売されてから、肺がんの治療成績は大きく向上しました。抗がん剤は言ってみればじゅうたん爆撃で、がん細胞だけではなく健康な細胞も攻撃せざるを得ないので、毛髪が抜けたりします。これに対して、分子標的薬はがん細胞をピンポイントで攻撃するため副作用が少なく、非常に効果が高い薬です。

Ⅳ期の非小細胞肺がんで、EGFR遺伝子異常があればまずは切れ味の良い分子標的薬(イレッサ、タルセバ、ジオトリフ)を最初に使い、T790Mでの耐性が出ればタグリッソ、その効果もなくなれば従来の抗がん剤を、2次あるいは3次治療で使うという流れが一般的です。EGFR遺伝子異常のない非小細胞肺がんの2次治療には免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ、あるいは抗がん剤であるドセタキセルと血管新生阻害薬であるサイラムザを併用で使います。なお、日本人の50%はEGFR遺伝子異常が陽性ですが、その他の遺伝子変異がある場合、たとえば5%を占めるALK融合遺伝子異常が陽性の人には3つの分子標的薬(ザーコリ、アレセンサ、ジカディア)を用います。しかし、ジカルディアは初回治療でなくザーコリが耐性になった方に用いられます。

――分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬がそれほどすぐれた薬なら、Ⅳ期でなくても早く使いたいと思うのではないでしょうか。

現在のところ、いずれも適用されるのはⅣ期だけです。Ⅲ期を過ぎて手術ができない場合は、放射線と抗がん剤を併用しますが、抗がん剤の代わりに分子標的薬を使う治療について臨床試験が行われています。効果が立証されれば、今後はⅢ期にも広がるかもしれません。

また、Ⅱ,Ⅲ期の手術後は、脱毛などの副作用を伴う従来の抗がん剤を使いますが、そこに分子標的薬ゲフィチニブを使う臨床試験はすでに終了し、結果を待っている段階です。

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