ドクターズガイド

これまでの一覧 →

結核

1/2

咳が長引いて血の混じった痰を吐いて…という典型的な症状が表れ、高齢者に多い病気として知られる結核。しかし、高齢者ばかりでなく若年層の集団感染も散発することもあり、今なお撲滅されない感染症の1つだ。結核診療のスペシャリスト、国立国際医療研究センター病院呼吸器内科/国際感染症センターの高崎仁医師に、結核のまん延を防ぐための基礎知識についてお聞きした。

――結核とはどのような病気なのでしょうか。

結核とは、結核菌という細菌が体の中に入って増えることで引き起こされる病気で、空気感染によって広がります。患者が咳やくしゃみをすると、しぶきと一緒に排出された結核菌が空気中を漂い、それを吸い込むことで感染します。日本では、結核患者のうち肺結核が約8割を占めており、発症すると、咳や痰(たん)、発熱など風邪のような症状が長く続くのが特徴です。他に皮膚結核、腎結核など、肺以外の臓器が冒されることもあります。

結核を患った歴史上の人物は数多く、例えば、幕末の高杉晋作や沖田総司、小説家の夏目漱石や樋口一葉、歌人の石川啄木や俳人の正岡子規など、そのためか、結核は一昔前の病気というイメージが強い人もいるのかもしれません。

――結核は昔からある感染症の1つですが、なかなか撲滅されません。日本では減っているのですか。

結核はかつて「国民病」と呼ばれた感染症で、1950年前後は少なくとも2人に1人は感染していたと推定されています。当時は1年間の新登録結核患者が60万人でしたから、2万人を切った現在と比べると30倍もの数でした。しかも年間12万人が死亡していた以上、最大級の感染症だったわけで、もちろん当時の日本人の死因第1位でした。

今でこそ結核は「免疫力(抵抗力)の低下した高齢者の病気」と思われていますが、当時は若い人も次々に感染して重症化する怖い感染症でした。患者数がガクンと減ったのは1950年代半ば以降、ストレプトマイシンという薬が使われるようになってからのことです。

結核

――結核菌に感染したら、どのくらいで症状が出るのでしょうか。

結核菌に感染したすべての人が発病するとは限りません。それに、感染から間もない1カ月程度の時期は、感染したかどうかがわからず、検査を受けても陽性にならないことがあります。通常は感染して半年から2年以内に発病することが多いのですが、発病しなければ、自分が感染しているという事実にすら気づかないまま何十年も過ごす人もいます。これを潜在性結核感染といいます。感染から何年も経ってから、健康診断の胸部X線検査で「昔、肺に炎症を起こした痕がありますね」と過去の結核感染の痕を指摘されて驚くことがあり、この痕を炎症性変化、陳旧性炎症瘢痕と呼んでいます。

――結核によって亡くなる人はどのくらいいるのでしょうか。

結核は昔の病気だと思う人が多いのですが、今でも2000人弱が亡くなっています。若い人は免疫力(抵抗力)が強いため、結核を発病しても死に至ることはほとんどなく、亡くなる人の大半は高齢者です。発病者が今でも年間2万人弱にのぼり、死亡者数がその10%にあたることから、やはり今でも結核はあなどれない感染症といっていいでしょう。

――結核といえば、咳をして痰が出て…という症状が有名ですが、いずれも風邪や喘息と似ています。軽視して、診断や治療開始が遅れることもあるのでは?

確かに、他の呼吸器の病気と症状が似ているため、診断が難しいことがあります。風邪だと思っていたのに2週間以上咳が長引くようなら、結核の恐れがあると考えてもいいでしょう。

普通の肺炎なら、発病から2~3日も経てば胸部X線画像で肺が真っ白に映りますが、結核の場合、発病してもあまり早くから変化は表れません。肺の影が広がるまでに時間がかかるので、1回のX線検査で問題がなければ、結核以外の原因を調べていくことになります。例えば、咳が1カ月も続く場合、喘息や咳喘息であればステロイドの吸入薬を使いますが、おさまった咳が再びぶり返すなら、結核も視野に入れなければなりません。

でも、風邪が流行る季節に結核患者を見つけ出すのは大変ですし、その時期に受診する患者の大半は結核ではなかったりします。一般的に、鼻水や喉の痛みなど、インフルエンザや風邪のような症状があって、1~2週間くらい咳と痰が続く程度なら、結核の可能性はそれほど高くないでしょう。結核が関係するのは、咳が続く、痰がからむ、何となくだるい、食欲はあるのにやせてしまう、体調が悪いが休むほどではない、寝汗がひどいなど軽い症状が長く続くことがポイントです。

1/2

続きを読む →



呼吸器感染症の関連情報一覧 ⇒