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社会システムとしての展開

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2025年、団塊の世代が75歳を迎え、高齢化率は30%と世界でも例をみない超高齢化社会に突入する。要介護・要支援者は、750万人超、医療、介護、福祉サービスへの需要が高まり、これを支える医療システムとして、国を挙げて、在宅医療を推進し、体制づくりが始まっている。

-在宅医療を始めた診療所や在宅医の現状について、教えて頂きたいのですが。

厚労省は、「上流から下流へ」という指針を示しています。上流というのは急性期の病院、下流というのは地域。急性期の病院と地域医療の間でスムーズに患者さんの移動が行われなければいけないのですが、あまりうまく連携ができていません。

原因のひとつとして、在宅医療でどんな治療が行われるかを理解している急性期病院の医師が少ないため、在宅医にスムーズにバトンタッチする仕組みが作れないでいたのです。しかし、最近は、地域医療連携室が窓口となって、少しずつ機能してきました。一方、受け皿である在宅医の方でも、在宅療養支援診療所の指定は受けてはいても、実質的に24時間365日稼働している施設がものすごく少なかったりします。在宅支援診療所を通して、「年間何例以上の看取り」というのを見ると、登録した中のごく一部しか在宅医療をやっていなかったりするのです。また、連携がうまくいかないということだけでなく、病院から送られる人たちが、非常に重症化していて、通常の外来診療を行っている医師では手に負えない患者さんが多く、対応できないという問題もあります。

―病院から在宅に移すのが早すぎるということでしょうか。

iPadを手に取る城谷医師

そういうことではなく、病院から地域の診療所に送られてくる患者さんは、がんの末期の人だとか、体にチューブがついているとか、呼吸器がついているとか、そういう医療行為の継続性が高い人だったりするため、一般の外来診療をやっていた開業医では手に負えないような、専門性の高い治療が求められるのです。外来で診断して薬を処方するだけではなく、病院での入院治療の延長上にあり、病棟で受けるのと同じように、専門性の高い医療処置が非常に多いのです。

もう一つは、在宅は24時間、365日ケアしないといけないので、小さなクリニックの院長が一人ではできない。他のクリニックと連携するか、一つの医療施設に3人以上の医師を置いてシフトを組む必要が出てきます。さらに、看護師、薬剤師、栄養士、ケアマネージャー、介護系の人たちが連携を取らなければいけない。既存の開業医の先生たちにとっては、経験したことのない分野の医療で、一部のコミュニケーションの長けた医師以外にとっては非常にハードルが高かったりするのです。

また、インターネットを上手く使って連携を作る仕組みを持っていないと難しい。電話やファクスではタイムラグが起こるし、効率も悪い。けれども、地域のクリニックは電子カルテの導入も遅れていて、電子カルテを使っていても、クラウド上の電子カルテを使うには、グループウエアを使わないといけなかったりします。その場合、セキュリティにも配慮する必要があります。小さなクリニックが導入に踏み切るには知識も必要だし、コストもかかるのです。

―地域連携の仕組みを作るためには、国の研究機関や大きな病院が主導で進めていかないと難しいですね。

今の医学部ではほとんど在宅医療の講義を設けているところもなければ、勤務医時代に在宅医療という概念を学ぶ機会もありません。東京大学では、研究・教育・臨床の3領域の活動を展開する医学部在宅医療学拠点を設置して、在宅医療に対応できる優れた人材の養成を行っています。そういうことを各地域でやっていかないと、在宅医療はうまくいかないでしょう。 在宅医療はこれは今までにない医療システムなのです。もしかしたら、新たな先端医療かもしれない。今の日本の在宅医療の仕組みを持っている国は、世界中どこにもないのですから。日本は世界に先駆けて新たな医療の仕組みを作り始めているのです。

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