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ピロリ菌除菌で日本の疾病構造が変わる

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60歳以上の日本人の7~8割が感染していると言われるピロリ菌。その存在が明らかになって30年の節目である2013年2月、ピロリ菌の除菌治療の保険適用対象がピロリ菌感染胃炎にまで拡大された。検査や治療がさらに進化しつつあるピロリ菌感染症の現在と今後の展望について、独立行政法人国立国際医療研究センター理事・国府台病院長 上村直実医師に話を聞いた。

― 胃がん発生にピロリ菌が深くかかわっているという認識が一般の人にも広まってきました。2013年にはピロリ菌感染による胃炎にも除菌治療の保険適用の範囲が拡大されましたが、最近の動向についてどのように見ていらっしゃいますか。

ピロリ菌が発見された1983年を皮切りに、多くの研究により新しい事実が明らかになりました。私が呉共済病院に勤務していた頃、ピロリ菌と胃がんの追跡調査を行い、関連を究明した研究もその一つです。ピロリ菌を除菌することで、胃がん撲滅とはいかないまでも、胃がんの死亡率はかなり下がることがわかったのです。そうすると、日本の疾病構造も変わっていくでしょう。

ちなみに、1年前に保険適用の範囲が拡大したことで、除菌する人が10倍くらい増えるのではないかと思っていましたが、実際には2~3倍の増え方のように感じています。

― 『ピロリ菌感染胃炎』と診断するためには、どのような検査を受けるのでしょうか。

保険診療でピロリ菌感染胃炎として除菌治療を行うには内視鏡検査が必須です。内視鏡検査で胃炎の所見を有した場合に感染診断を行うことができます。内視鏡検査以外にも、感染の有無を調べるにはさまざまな検査法があります(表)。どの検査でもよいのですが、注意したいのは、陽性なのに陰性と出る「偽陰性」が5%弱の割合で現われることです。そのため、陰性と出た場合は一つの検査法だけでなく、もう一つの検査を行うよう学会で推奨されています。

【表】ピロリ菌に感染しているかどうかを調べる検査法
内視鏡検査 ・迅速ウレアーゼ法…胃の粘膜の組織を取り、その場でウレアーゼという酵素の活性を調べる。わずか20分で結果がわかる
・組織鏡検法…組織を取って顕微鏡で見る検査。結果が出るのに2~3日かかる
・培養法…組織を培養して調べる検査。時間がかかるためあまり使われていない
尿素呼気検査法 一番よく使われている検査。除菌治療後に、吐く息で除菌できたかどうかを調べるのに用いられることが多い
抗体測定法(血中・尿中) 血液や尿から、ピロリ菌の抗体を持つかどうかを調べる
便中抗原測定法 便の中にピロリ菌の抗原があるかどうかを調べる

― 最近の胃がん検診はどのようになっているのでしょうか。

従来から胃がん検査として用いられてきたのは、バリウム検診です。しかし、ご存じの通りバリウムは飲みにくい上、便秘になって消化管に穴が開くこともあるという負の部分も多く報告されています。40年前、バリウム検診を受けた人と受けない人とでは、受けた人の方が胃がんで亡くなる確率が少ないというエビデンスがあり、厚生労働省が推奨してきました。ただし、現在はピロリ菌の存在が明らかになっているので、バリウム検診のあり方も今後変わってくるでしょう。東京都の医師会でも、今後は血液でわかる胃がんリスク検診(ABC検診)に移行しようと合議されています。

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