ドクターズガイド

コラム

第4回 腹部大動脈瘤と閉塞性動脈硬化症

動脈硬化による血管変化は血管の内腔が細くなる狭窄と動脈壁全体が拡大する動脈瘤があります。腹部大動脈瘤は腹部大動脈が拡大する疾患であり、閉塞性動脈硬化症は血管の内腔が細くなる疾患です。今回はこの2つの疾患の症状や診断方法、治療法についてお話して行きたいと思います。

まずは、腹部大動脈瘤からお話ししていきましょう。腹部大動脈瘤は、細かく分類すると、真性動脈瘤と解離性動脈瘤の二種類があるのですが、腹部大動脈瘤のほとんどが(99.9%)が真性動脈瘤です。ですから、今回は真性動脈瘤についてのみのお話をさせて頂きます。

真性動脈瘤は、腹部の大動脈の一部が、瘤のように膨らみ(図1のb )大動脈径が5以上になると破裂の危険性が強くなり、内腔の血圧に耐えきれなくなった時には破裂します。破裂すると激しい腹痛が伴い、失神を伴う程の激痛が走ります。しばしば脳卒中と誤診される事もあります。一旦破裂してしまうと、病院に到るまでに死亡する事が多く、なんとか病院に到達しても、5割前後が死亡します。


破裂する前に病院で腹部大動脈瘤(真性動脈瘤)と診断されても、自覚症状が全くないのもこの疾患の特徴です。そのため、腹部大動脈瘤(真性動脈瘤)が発見されるのは 別の腹部の病気で病院に行った時に発見されるケースがほとんどです。腹部大動脈瘤(真性動脈瘤)は腹部エコー、CT、血管造影などで診断します。多くの場合は、他の腹部の病気で病院に行き、腹部エコー、CTをした際に発見される事が多く、腹部大動脈瘤(真性動脈瘤)と診断された時のみ血管造影が行われます。血管造影の結果で、治療法は2つのどちらかになります。

a:
最近はステントグラフト(図2)移植術が多用されています。

ステントグラフトとは、人工血管とステントが一体化したものです。ステントグラフトの中心にカテーテルを入れて折りたたみ直径5・6ミリにしたものが、デリバリーカテーテルと言い、これを大腿動脈から挿入し、大動脈瘤中枢側の位置でステントグラフトをデリバリーカテーテルから開放します。すると、ステントグラフトが大動脈壁に密着します。反対側の大腿動脈より、Y字人工血管の脚を同様に挿入し、Y字型移植が終了します。(図3)

b:

全身麻酔をかけ、腹部を切開し、人工血管を大動脈瘤を切開し移植する方法があります。(図4)

 

次に、閉塞性動脈硬化症です。閉塞性動脈硬化症は図1の動脈のどこかが狭くなったり閉塞したりし、その末端側の血流が減少する事で起こる疾患です。間欠性跛行といって、数10m~数100m歩くと、下肢が痛み、休まなくてはならなくなり、数分じっとしているとまた歩くことができる。この症状が特徴です。ひどくなると、じっとしていても脚が痛んだり、足先に潰瘍ができる人もいます。診断方法としては、ABI(下肢血圧/上肢血圧 比)を見ることで、下肢虚血の強さが判明する方法と、(ABIが、0.6以下が手術の対象となります。)血管造影で狭窄や閉塞血管場所を判断する方法とがあります。治療法は大きく2つに分けられます。

a:ステント移植術(冠動脈の際に説明したものと同様)

この処置の適応は、血管内にカテーテルを通すことができる様な狭窄や閉塞でなければ処置できません。
長期間の開存率が高いのは、大腿動脈より中枢側の血管病変の症例とのデーターがでています。

b:手術法

狭窄 又は閉塞血管の中枢側の血管から血流を取り血流の少ない末梢側へのバイパス術です。

※ バイパス材料

1)人工血管  小血管へのバイパス手術の人工血管は一般的にはPTFE(図5)(レインコートなどに使用されている繊維であるゴアテックス)

2)大伏在静脈(冠動脈バイパスの項ですでに説明しています。)


一般的によく施行される手術は、1.鎖骨下動脈━大腿動脈バイパス手術 2.大腿動脈━大腿動脈バイパス手術 3.大腿動脈━膝窩動脈バイパス手術(図6) 等があります。

1, 2, は、図1 a の解剖図の動脈を人工血管でバイパスします。その際、人工血管は皮下を通します。

     

これらの病気にかからない為にも、普段の生活を健康的に過ごす事がまず何より大事ですね。次回からは予防治療法についてお話しさせて頂きます。




第1回 胸が痛いと感じたら・・・
第2回 胸が痛む動脈硬化による心臓疾患の検査法
第3回 治療法
第4回 腹部大動脈瘤と閉塞性動脈硬化症
第5回 食事療法について
第6回 運動療法について


<大西健二氏 プロフィール>

大阪大学医学部卒業。医学博士。1974年、ケニア共和国 国立ケニアッタ病院心臓外科開設のため、日本チーム隊長として勤務。1977年、紀南総合病院心臓血管外科開設部長として勤務。大阪大学医学部付属病院第一外科講師、大阪府立病院心臓外科部長、桜橋渡辺病院副院長などを経て厚生年金病院医療顧問として現在に至る。