ドクターズガイド

コラム

第3回 治療法

今回は、(1)心筋梗塞 (2)狭心症 (3)急性解離性動脈瘤 の治療法についてお話させて頂こうと思います。

心筋梗塞、狭心症には、メスを使用せず、カテーテルによる治療と、胸を開けての手術の二つの方法があります。
 どのような症例がカテーテル治療が出来るかと言うと、心筋梗塞症例の場合、冠動脈の左主幹部閉塞症例は手術となり、それ以外はカテーテル治療となります。狭心症では冠動脈3本共に狭窄があるか、または左冠動脈主幹部に狭窄がある場合は手術となります。急性解離性動脈瘤は全例手術となります。ご説明を始める前に、「閉塞」と「狭窄」の違いについてもう少しわかりやすく説明させて頂きます。「閉塞」とは血管の通り道が完全に塞がってしまっている状態で、「狭窄」とは血管が狭くしぼまってしまっている状態の事を言います。

I カテーテル治療法

(1)心筋梗塞

冠動脈造影を行い、3本の冠動脈のどれかが閉塞している場合心筋梗塞と診断されます。心筋梗塞と診断されれば、一般的に血圧や脈拍を計る場所である、上腕動脈、又はとう骨動脈からカテーテルを挿入し、冠動脈が閉塞してしまっている所までカテーテル先端を導きます。そして、まず始めに、術者の手元側のカテーテルの端から吸引し、動脈の閉鎖の原因になっている血管の中に出来た血の塊である、新鮮血栓を吸引します。その後、血管内エコーを使って吸引した場所の血管の状態を診断し、冠動脈狭窄の程度を見て、バルーンカテーテルと呼ばれるもので拡張します。バルーンカテーテルの径は挿入時は約2mmですが、挿入後3~4mmに拡張します。また、拡張時間は10~20秒で、拡張が不十分なら、再度同様な手技をくりかえします。その後ステント(カテーテルをカバーしているので、カテーテルとほぼ同じ太さ)を挿入します。

(2)狭心症

冠動脈造影を行った結果、3本の冠動脈のうち2本までの冠動脈に狭窄があり、それらの狭窄が、75%以上の狭窄している場合が治療の対象となります。

II 胸を開けての手術

例:胸を開けての手術はカテーテル手術に比べ身体への負担が大きいのですが、次の様なメリットがあります。

  1. 1:左主幹部をバルーンで閉塞することにより、左心室の血流がほぼ無くなる為の危険性
  2. 2:3本の狭窄症例では、枝がある為、4~5か所にステント挿入しなければならない為の危険性

1.2の為バイパス手術の方が安全で、確実である為、バイパス手術が選ばれます。(死亡率1%以下)

(1) 心筋梗塞及び狭心症

前胸部の中央にあるに胸骨を切開し、心臓を直接見て病変のある血管の末梢側に他の血管をバイパスします。バイパスとは、閉塞、もしくは狭窄している冠動脈の末梢側に自分の体内に存在する別の血管をつなげ、血管がその道を通ることによって血流の少ない部位に多くの血液を流してあげる手術です。バイパスに使用される材料は以前は大伏在静脈(下肢の表層部分に存在するの静脈)と呼ばれる部分でしたが、現在ではほとんどケースに動脈が使用されます。その動脈とは  a 内胸動脈(胸骨の内面外側に縦に走っている動脈)  b 胃体網動脈(胃の大弯側を走っている動脈)  c とう骨動脈(前腕を肘より手首まで走っている動脈)が使用されます。

このバイパス法には、心臓を動いた状態のまま手術する方法と、心臓を止め、人工心肺下(心臓、肺の役目を体外でし、心停止中全身の循環を維持するもの)の手術があります。最近はほとんどが前者です。


(2)急性解離性動脈瘤

スダンフォードA型(第2回コラム参照)のみが緊急手術の対象となります。人工心肺下に心臓を止めて、内膜亀裂部を含む上行大動脈を人工血管(ダクロン繊維で織られた血管)に置換する方法です。(図3)





第1回 胸が痛いと感じたら・・・
第2回 胸が痛む動脈硬化による心臓疾患の検査法
第3回 治療法
第4回 腹部大動脈瘤と閉塞性動脈硬化症
第5回 食事療法について
第6回 運動療法について


<大西健二氏 プロフィール>

大阪大学医学部卒業。医学博士。1974年、ケニア共和国 国立ケニアッタ病院心臓外科開設のため、日本チーム隊長として勤務。1977年、紀南総合病院心臓血管外科開設部長として勤務。大阪大学医学部付属病院第一外科講師、大阪府立病院心臓外科部長、桜橋渡辺病院副院長などを経て厚生年金病院医療顧問として現在に至る。