ドクターズガイド

コラム

第2回 胸が痛む動脈硬化による心臓疾患の検査法

第1回の「胸が痛いと感じたら・・・」読んで頂けましたでしょうか?前回、ご紹介した胸が痛む動脈硬化の代表的心臓疾患、(1)狭心症、(2)心筋梗塞、(3)急性解離性動脈瘤の症状についてご説明させて頂きましたが、今回はこれらの心臓疾患の身体に負荷の少ない検査法(痛みを伴わない検査法)と身体に負荷の多い検査法(痛みを伴う検査法)がどのように検査に取り入れられていくのかをお話させて頂こうと思います。

<心筋梗塞と急性解離性動脈瘤は病院で早急な検査が行われる>

前回お話させて頂いたように、心筋梗塞と急性解離性動脈瘤になった場合は病院に行かずにはいられない状況に陥ります。心筋梗塞や急性解離性動脈瘤は1分1秒の病院での処置が生死を争う為、早急に様々な初期検査が同時進行で行われます。これらの検査は来院してから検査結果が出るまでで30分から1時間と言う早さで処理されます。

心筋梗塞

一般的にまず来院してすぐ、点滴を開始し、血液検査と心電図の検査が同時に行われます。血液検査の結果で心筋梗塞が何時間前に発症したのかを、検出される物質で判断され、同時に進行している心電図の結果を合わせてほぼ心筋梗塞と診断されます。(例外もありますが、心電図が図1cまたは図1dの様な波形がでればほぼ心筋梗塞に特徴的な波形です)。診断されるとすぐに冠動脈造影検査が行われます。冠動脈造影検査は上腕動脈(肘部にて触知する動脈)からカテーテル(直径約2mm 長さ約1mのチューブ状のもの)を挿入し、左右冠動脈口(心臓の周りを走っている、心臓に栄養を与えている血管で大動脈の根元からでている血管:第1回コラム図I参照)にカテーテルの先端を入れ造影剤を注射器で注入し造影し、冠動脈の閉塞部(心筋梗塞を起こす原因になった冠動脈の詰まった部分)が判明されます。造影剤を注入すると身体が急にカーっと熱くなるような感覚に襲われます。前もって医師が胸が熱くなりますが気にしないようにと声をかけられるはずです。

急性解離性動脈瘤

心筋梗塞と同様来院と同時に点滴を開始し、胸部の単純レントゲン写真、心電図が同時に行われ、心筋梗塞が起きていないかを診断し、その後すぐ心臓エコー検査が行われるのが一般的です。急性解離性動脈瘤のStanford A型(第1回コラム参照)は心臓の周りの心嚢膜内(心臓を取り巻いている袋)に血液がたまる状態がエコー検査で簡単に見つける事が出来ます。発見されるとすぐに大動脈造影検査を行い、内幕亀裂部を見つけ出します。また、Stanford B型もエコー検査を行いますが、Stanford A型のような顕著な異常が見つかりません。Stanford B型もStanford A型と同じく、エコー検査の後、大動脈造影を行い検査します。

心筋梗塞と急性解離性動脈瘤は血圧が異常に低下し既に意識がないか、あっても痛みを持った状態で来院する事がほとんどです。意識がない場合は上記の検査が行われますが、意識があり、痛みを持った状態で来院した場合は、検査が行われる前に痛みを止めるため薬が使用されます。

<狭心症が一番診断が難しい>

狭心症:第1回でもお話しさせて頂きましたが、心筋梗塞や急性解離性動脈瘤のように病院にはいかずにはいられなくなる前に、たびたび起こる短時間の胸痛に違和感を感じて来院する場合がほとんどです。その為、胸痛の原因が心筋梗塞であるかどうかをまず確かめる必要があるのに加え、他の2つの疾患に比べ1分1秒が生死の分かれ目にならない為、なるべく身体に負荷の少ない検査から順を追って診断をしようとする事から、複雑な検査法が行われます。狭心症の場合はまず 心電図を取り、図1bのような波形があれば狭心症が疑われます。次にCTもしくは核医学検査で心筋虚血(心臓が酸素不足になる状態)があれば冠動脈造影検査に移ります(図3)。核医学検査はタリウム、テクネシュームなどの放射性物質を注射器で血管内に入れ、心筋の血流分布を見る事が可能で、薬剤にて心臓に負荷をかけ心臓の虚血を診断する事ができます。(図2)放射線量はCT検査より少なくあまり人体に害を与えません。これらの検査結果を見て狭心症と診断された場合は冠動脈造影検査を行い、図3bの狭窄所見があれば、処置に移ります。


狭心症については医師と相談しながら患者が検査を行うか行わないかの意思を決断し検査手段を決める事が出来ますが、心筋梗塞や急性解離性動脈瘤の場合は患者の意思で検査手段を決める時間のない程一刻も早い検査が必要になる為、検査手段については上記した手順で行われる事になるでしょう。

次回はこれらの治療法についてお話したいと思います。


第1回 胸が痛いと感じたら・・・
第2回 胸が痛む動脈硬化による心臓疾患の検査法
第3回 治療法
第4回 腹部大動脈瘤と閉塞性動脈硬化症
第5回 食事療法について
第6回 運動療法について


<大西健二氏 プロフィール>

大阪大学医学部卒業。医学博士。1974年、ケニア共和国 国立ケニアッタ病院心臓外科開設のため、日本チーム隊長として勤務。1977年、紀南総合病院心臓血管外科開設部長として勤務。大阪大学医学部付属病院第一外科講師、大阪府立病院心臓外科部長、桜橋渡辺病院副院長などを経て厚生年金病院医療顧問として現在に至る。