ドクターズガイド

コラム

第1回 胸が痛いと感じたら・・・

心臓の病気はいろいろありますが、皆さんは動脈硬化についてご存知でしょうか?動脈硬化と言う言葉はおそらく1度は耳にした事があるかと思いますが、実際に身近で体験された方以外はすぐにどういう症状なのかきちんと理解出来ている方は少ないかと思います。 動脈硬化とは、動脈にコレステロールなどが血管壁に溜まり、弾力性や柔軟性を失う事をいいます。その為、血流がスムーズに流れなくなり、心臓や脳などの臓器や筋肉などの組織に十分な酸素が行き渡らなくなるのです。それによって心臓の場合胸が痛むと言う症状が出てきます。胸が痛む動脈硬化の代表的心臓疾患といえば、

(1)狭心症 
(2)心筋梗塞
(3)急性解離性動脈瘤

があります。これらは動脈硬化が主な原因である事が多いので、ある程度予防可能な疾患なのです。動脈硬化はいわゆる生活習慣が原因で起こりやすくなります。普段の生活習慣を改善する事で予防が可能になるのです。詳しくは第4回目のコラムでお伝えします。
それでは、それぞれの症状について説明していきましょう。

狭心症と心筋梗塞は、心臓を養っている動脈、即ち冠動脈(心臓の周りを走っている血管で、心臓の細胞に栄養を与えている血管で大動脈の根元からでている血管)(図I)の疾患です。狭心症と心筋梗塞の相違点は前者が、冠動脈の狭窄状態で、後者が、冠動脈が閉塞した状態の違いがあります。

狭心症は一般的に胸が痛むと言われていますが、実は人によりまちまちなのです。痛みが左肩に放散する人もあれば、胸が締め付けられる人、上腹部が圧迫されたり、首、顎、歯に痛みが放散することもあります。但し、糖尿病の人は、痛みを伴わない人が多いので、十分な注意が必要です。胸痛の持続時間も、数秒から、数分~数十分に至ることもあり、30分以上続けば切迫梗塞といい、心筋梗塞の一歩手前です。胸痛以外に、冷や汗が出たり、呼吸困難になり勘違いをして窓を開けたりする人もいます。心筋梗塞は、胸痛、呼吸困難からはじまり、ショック状態に陥り、意識も消失する人もいます。そのためこのまま、病院まで到達されないで死に至る方も数多くみられます。

 次に、急性解離性動脈瘤ですが、これは、大動脈(心臓から全身へ血液を送る大きな血管:図II)の疾患です。大動脈の壁は、外膜、中膜、内膜の三層の構造になっており、中膜が、動脈硬化が原因で、壊死になり、内膜の亀裂部より血液が外膜と内膜の間を裂く様に流れてしまうのです。

(図III)この疾患を解離性動脈瘤といいます。壁を裂く様に血流が流れることで、前胸部より、背部にかけて、強烈な痛みが走ります。この痛みは、麻薬を使用しても止められない程で、ショック状態に陥る人も多々みられ、この疾患の80%以上が高血圧症を伴っています。

(2)(3)の疾患の患者は症状が強いため 病院に行かずにはいられないはずです。病院まで到達できずに亡くなられる方も多いのです。


胸痛がすぐ止まる人はついつい大丈夫だと過信しがちですが上記に述べたような症状がある場合は、なるべく早い段階で専門医を受診される事をお勧めします。症状が全くない方も、このような疾患にかからないよう、普段から食事や運動に気をつけ出来るだけ健康的な生活を送るよう心がける事を忘れないようにしましょう。

次回は、これらの疾患の非観血的検査法(痛みを伴わない検査法)と、観血的検査法(痛みを伴う検査法)について述べたいと思います。


第1回 胸が痛いと感じたら・・・
第2回 胸が痛む動脈硬化による心臓疾患の検査法
第3回 治療法
第4回 腹部大動脈瘤と閉塞性動脈硬化症
第5回 食事療法について
第6回 運動療法について


<大西健二氏 プロフィール>

大阪大学医学部卒業。医学博士。1974年、ケニア共和国 国立ケニアッタ病院心臓外科開設のため、日本チーム隊長として勤務。1977年、紀南総合病院心臓血管外科開設部長として勤務。大阪大学医学部付属病院第一外科講師、大阪府立病院心臓外科部長、桜橋渡辺病院副院長などを経て厚生年金病院医療顧問として現在に至る。